歴史に培われた技術で独自ブランドを
道南食品株式会社の前身は、1919年(大正8年)創業のビスケット製造の函館菓子製造株式会社。その後、1936年(昭和11年)に明治製菓株式会社の函館工場となり、主にサイコロキャラメルを中心に明治製菓の商品を製造してきた。1980年(昭和55年)に分社独立、現在の道南食品株式会社となる。北海道内でも有数の歴史と伝統のある函館の菓子製造業の老舗のひとつとして、株式会社明治品製造と並行しながら、北海道・函館らしい独自の道南ブランド商品の開発・製造を手がけている。
北海道・函館という地の利を活かした菓子づくり
1860年(萬延元年)創業の和菓子販売の函館千秋庵、明治時代の函館案内書は西洋菓子各種販売商が多数紹介されているように、北海道での菓子の発祥地は函館といわれている。
1859年(安政6年)に横浜、長崎とともに、日本初の国際貿易港として開港した函館は、早くから諸外国との文化交流があり、食文化もその例外ではなかった。明治初期よりさまざまな西洋料理店やパンやアイスクリームなどの洋菓子が登場したと、当時の新聞広告からもうかがえるとのこと。貿易港だったことから菓子材料の流通にも便利で、周辺地域で酪農が盛んだったこともあって、早くからハイカラな洋風菓子を製造する会社がいくつもあったという。その歴史を受け継ぐ道南食品では、地の利を活かし、株式会社明治製の地域限定商品の企画提案や、北海道の特徴や素材を活かしたオリジナル菓子づくりにも力をいれている。また、2011年4月中旬には北海道産の練乳パウダーを使用したチョコレートを発売するなど、新しい取り組みも積極的に行っている。
塩っぱい海産物と甘いお菓子の融合
全道の土産店で販売されている、とうもろこし、カボチャ、小豆など、広く北海道産の原材料を用いた商品を従来から手がけてきた道南食品。最近の新商品は白樺樹液関連製品。ロシアやフィンランド等で古くから健康に良いとされてきた白樺の樹液をチョコレートに練りこんだ商品を開発し、販売を開始した。評判も上々だそうだ。
そんな中、さらに函館・道南に絞った新商品づくりの開発に着手。函館の特産品を使った新しい商品といえば何があるだろうかと、開発部門では色々思い悩んだと、製造部部長の竹内敏也さんは言う。様々な可能性を探る中、やはり「函館と言えば海産物」というのが結論に。しかし、甘い菓子に合うものはあるだろうか。そこで着目したのが、ここ数年健康食品としても注目されている、道南でしか採れない、がごめ昆布だった。
甘いお菓子と塩っぱい材料とのバランス良い配合や味付けを見つけ出すための試行錯誤が続いた。甘さの中にアクセントとして素材の良さや存在感を残すという難問と格闘の末に、キャラメルとチョコレートに粉末化したがごめ昆布を練りこんだ商品を開発。がごめ昆布特有の粘りと風味がほのかに活かされた、おもしろい食感の「がごめ昆布キャラメル」と「がごめ昆布チョコレート」が出来上がった。「がごめ昆布キャラメル」は、平成17年に開催された第49回函館圏優良土産品推奨会で『函館市長賞』を受賞。新函館ブランドの菓子として全国に発信していきたいと意欲十分だ。
新たな素材を求めて
道南食品では、新たな函館ブランドの開発にむけて、原料となる素材探しにも熱心に取り組んでいる。道内バイオ産業の連携促進や販路拡大等を目的として設立された北海道バイオ産業クラスターを情報交換の場として積極的に活用し、他の参加企業の製品を菓子の原料や材料に用いられればと竹内さんは話す。異業種との交流で地域色豊かな商品作りの幅を広げていければと言う。
函館の菓子製造は観光とも密着した業界。函館が持つ観光資源と水産業をはじめとする地元企業の製品の活用で、函館らしい新発想の商品開発が必要だと考える道南食品。土産品としても全国から認められるよう、味や食感はもちろんのこと、見た目やパッケージ、話題性の提供などにも独自色を打ち出して、魅力ある高品質の菓子を提供できるよう、情報収集、研究開発に努める毎日だ。 |