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マルキチ食品株式会社

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地域の優れた食材の昆布に着目

 昭和30年の創立以来、松前漬、佃煮類、煮豆類の製造販売を手掛けてきたマルキチ食品株式会社。商品の原材料である昆布を扱う中で、全国的にも有名な昆布の産地に囲まれている割には、函館では昆布が食材として食べられていないことに気が付いた。北陸や関西地方では古くから、北前船の交易の歴史と共に昆布の食文化が伝えられ、「食べる昆布」としての消費量が多いのと対照的である。そこで、「もっと昆布を身近に感じ、食べて欲しい」と、本格的な昆布巻きの製造販売に乗り出したのが昭和55年。今では製品の約6割を昆布巻きで占めるというほど、中核商品として力を注いでいる。

素材へのこだわり

 「昆布巻きは味付けのみならず、その食感が大切」と話す代表取締役社長の金子宏道さん。マルキチ食品では、約25年前から函館市の戸井漁協小安(おやす)支所と協力して、種から開発した真昆布を使用している。通常のダシ昆布にくらべ薄手で幅も広く、研究の結果、収穫初期(6月上旬)のものが味や食感などの状態が昆布巻きに最適と判断、この時期のものをマルキチ食品専用昆布として仕入れている。
 中に入れる具も「美味しさと健康、そしてオリジナリティーを追求した商品を作っていきたい」と、昆布に合う素材を見極め、定番の鰊や紅鮭に加え、食べやすさを考慮しタラコを羊羹状に固めたマルキチ食品独自製法のもの、世界三大珍味のひとつフランス直輸入のフォアグラ、カナダ産キングサーモンなど、新しい食材を使った商品も次々と開発。
 昆布巻きは熱処理の工程が多いため、昆布はもちろんのこと、具材となる様々な素材が本来持つ味や食感を損なわない製法に工夫を重ねている。素材に合わせ、昆布で巻いてから味付けするものや、別々に味付けしてから昆布で巻くなど、吟味に吟味を重ねたそれぞれの製造工程を生み出し、1本1本手づくりで丁寧に製造された商品はどれも逸品。工夫を凝らしたフォアグラ巻などのオリジナル商品は、「モンドセレクション」など数々の賞を獲得している。

昆布の魅力と可能性を探求

 市内の学校給食のアンケートでは残念ながら昆布巻きはやや不人気だそう。昆布はミネラルやヨード等の栄養素を含み食物繊維も豊富など、健康に良い食品という認識はあるものの、食べ方の種類が少ない、味が似かよっているというイメージがあって、食材としてはあまり活用されていないという現実がある。
 昆布は味わいという点でも魅力的な食材と語る金子社長は「食材としての昆布を広めるためには、まだやれることがたくさんあるはず」と、昆布の食材・食品としての特徴や魅力を今一度見直し、創意工夫で新しい味の昆布商品を作っていきたいと意欲的だ。健康食品として今話題のがごめ昆布が持つ特有のぬめりを活かした製品づくりなど、研究中の製品もいくつかあるという。
 また、同社では、地元企業と協力し合い、有限会社バイオクリエイトという会社を設立、北海道大学水産学部の研究者の協力も得、がごめ昆布が持つ優れた成分に着目し、栄養補助食品や化粧品の開発にも携わっている。

本当の安全・安心・美味を目指して

 ここ函館は、材料である昆布の生産地の状況がよくみえる環境にある。「どうやって、どんな状況で育ったかがわかる。生産者の顔が見える。これこそ本当の意味での安全・安心の製品作りの原点だと思う」と。食品の安全性が問われている昨今だからこそ、昆布の里・函館地産の間違いの無い素材で、今まで培った経験と技術をもとに、消費者が望む新しい味を工夫し、提供していきたいという。今までは、業務用途として外食産業や食品卸業者への販売の比率が高かったが、これからはマルキチブランドで一般消費者向けに直接販売していきたいという。
 地元に愛される味は全国、果ては世界中で認められるはず、と“昆布巻で世界に挑戦!”をモットーに掲げたマルキチ食品ならではの、安全・安心・美味の三拍子揃った、函館育ちの昆布の魅力を引き出した新たな商品の登場が楽しみである。


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