Hitec newsHITEC ニュース

海外出張報告 〜欧州クラスター視察2009〜

企画事業部長 吉野 博之

欧州における先進的なクラスター政策の概要や優れたクラスター活動の取り組みを学んで、函館マリンバイオクラスター形成に活かすため、欧州クラスター視察2009へ参加いたしました 。
視察は、全国イノベーション推進機関ネットワークの主催で行われ、文科省知的クラスター事業、経産省産業クラスター事業、他のクラスター事業の代表者、 文科省と経産省の担当者、事務局担当者の総勢15名の視察団が、平成21年10月4日から11日までの日程でドイツのハンブルク、ベルギーのブリュッセ ル、フランスのグルノーブルを訪問しました。
ハンブルクは古くから港湾商業都市として発展したドイツ第二の都市ですが、現在は航空機クラスターも推進しています。航空機クラスターは、エアバス、ル フトハンザテクノロジー、ハンブルグ空港会社の3大企業をコアとして、中小企業約300社、ハンブルグ大学、ハンブルグ応用化学大学等4大学、ハンブルグ 経済振興公社が参画し、雇用者36千人(派遣社員を除く。)、総売り上げ70億ユーロの非常に大きなもので、国の支援を受けながら研究開発と人材育成を中 心に進めていました。戦略プロジェクトとして、3つのランドマークプロジェクト「燃料・キャビン改良プロジェクト(エアバス)」「メンテナンス改良プロ ジェクト(ルフトハンザテクノロジー)」「エアポートオペレーション向上プロジェクト(ハンブルク空港)」を掲げ、現実的で明確な目標を設定して堅実に進 めているのが印象的でした。
ブリュッセルでは、EU open daysというコンファレンス(会議)が開催され、日本の代表団として参加しました。ブリュッセルは、ベルギーの首都で欧州連合(EU)の本部が置かれて いることで知られており、欧州政治の一大拠点となっていますが、今回の会議もEU本部の一角で行われました。会議では〜Global Challenges, European responses〜という総合的なテーマの下、全てのEU加盟国、ブラジル、中国、アイスランド、日本、ロシア、ウクライナ、米国など約40カ国から政 治家、開業医、研究者と企業、銀行と市民の社会組織の代表者が集合し、6,000人以上の参加がありました。今回、我々視察団はクラスターに関して討論す るワークショップに参加し、日本から二題の事例発表を行いました。この中でケンブリッチ大学のBarrell教授は、「知識よりも創造力が重要であり、こ れからの地域の発展には、グローバルかつ戦略的なクラスター活動が大変重要となる。」とグローバル化を強調されていました。
グルノーブルは、フランスの中でも第2の経済発展地域であるローヌ・アルプス地域の中心で、マイクロ・ナノクラスター(MINALGIC)を形成してい ます。MINALGICは、100km程度のエリアの自治体、産業関係団体、大企業・中小企業等150社程度がコラボレーションするネットワークで、シス テムオンチップ周辺のマイクロ・ナノテクと、ソフトウェアインテリジェンスを中心に、基礎研究から産業界への技術移転・産業化に取組み、世界各国から 470の企業(43,000人)が参加するというフランスの中でも最も大きな成果を上げているクラスターです。その要となっているのがMINATECとい うノベーションキャンパスで、1km程度の範囲に実際に顔を合わせられるマイクロ・ナノテクノロジーに関する研究、教育、産業界の研究拠点・研究開発ラボ の集合体となっています。そこでは、職員8名がネットワークの中心を担い、各研究機関の取り組みをコーディネートすることで成果を上げていました。今後、 さらにバイオ分野へも技術を拡大する計画で、美しい自然環境を活かし、教育センター、ホテル、レストラン、スポーツ施設、公園・緑地・交通システムなど一 体的に街作りを進める「GIANT」プロジェクトを推進しています。
今回の欧州視察全体を通して、クラスターを成功させるために重要だと感じたことは、「参加機関の信頼関係」「人材教育」「地域クラスター間のネットワー ク」「問題解決の場」(お互いが直ぐにディスカッションできる場が必要)の4つで、今後のクラスター推進に役立てていきたいと考えています。


(写真左)ハンブルク ルフトハンザテクノロジーにて
(写真右)グルノーブルクラスターの中心MINATECの前で


ブリュッセル コンファレンス会場(EU本部)

海外出張報告

プロジェクト推進科 小西靖之

化学工学分野の国際会議で、都市エリア事業の成果を報告し、同様な研究者からの意見を求めるととも、類似の研究状況の情報収集を行うことを目的に、9th International Conference on Chemical and Process Engineering (ICheap-9)に参加しました。
ICheap9は、隔年で開催される化学工学とプロセス工学の国際会議であり、今回は12th Conference of Process Integration, Modeling and Optimization for Energy Saving and Polution Reduction(PRES’09)と同時開催で、5/10〜5/13にシェラトンローマカンファレンスセンターで行われました。
今回の参加は、2003年のICheap6以来2回目の参加であり、申込み報告論文の査読(peer reviewer)とFOODセッションの座長(Chairperson)を行い、ICheap9&PRES’09の国際会議運営協力者 (Participants)として登録されていました。
ICheap9では、172件の口頭報告と134件のポスター報告が行われました。
今回は、都市エリア事業で明らかにした畜肉ジャーキーの食品内部における水分の解析及び最適乾燥技術の成果の一部を”Quantitative Evaluation of the Design-Parameters Requested in a Drying Operation of Beef and Pork”というタイトルで、ジャーキー乾燥工程中の新しい品質評価パラメータの提案に関する報告を行いました。聴衆者からは、NMR解析で得られる相関 時間(τC)の測定に関するものや、官能評価との相関性などに関する具体的な内容の質問があり、報告後も意見交換を行うことが出来ました。


(写真上)ICheap9会場の様子 (写真下)発表スライドの1コマ