函館・道南では、地元の資源やオリジナルな技術を活用したユニークな企業が数多く活躍しています。
当ホームページでは、それらの企業を取材し、広く全国に向けて発信しています。
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↑代表取締役 布村 重樹氏
今や道南を代表する食材として、その存在を広く知られるようになった「がごめ昆布」。その魅力を全国に広め、自然と共生する優れた産業育成と製品化を目指しているのが「函館がごめ連合」。その会長を務める布村重樹氏の本業は、建設コンサルタント業務を主業とする株式会社ノース技研の社長だ。
建設コンサルタントとは、およそイメージがかけ離れたガゴメのブランド化をリーダーとなり推進することになったのは何故か。その経緯と心を布村社長に聞いた。
同社の前身である株式会社布村測量設計事務所は、昭和46年の設立。布村社長自身は大学卒業後、下水道関係の計画や設計を行う関西の会社で約10年間業務経験を積み、技術士の資格を取得して、平成5年に北海道に戻った。
当時の函館には、技術士の資格者を有して正式に建設コンサルタント業務を行う会社がなく、札幌の会社が全道の仕事を一手に引き受けていた。また関西と北海道における、ローカルルールの違いもあり、それを学ぶ必要もあった。関西からいきなり函館に戻っても、仕事を得るのは難しいと判断した布村氏は札幌に事務所を開設、まずは札幌のコンサルタント会社の下請けとして業務経験を積むことで人を育て、新たな仕事を獲得していくことを目指した。
やがて社内の人材育成が進んで、徐々に元請けとして提案できるようになり、営業がしやすい地元の、函館で仕事を獲得することにシフトするようになっていった。
「株式会社 ノース技研」の場所を地図で確認できます。
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創立 |
1971年2月 |
代表者 |
代表取締役 布村 重樹 |
住所 |
〒041-0812 函館市昭和3丁目23-1 |
TEL |
(0138)43-6500 |
FAX |
(0138)43-2475 |
URL |
http://www.north-giken.co.jp/ |
従業員 |
35名 |
年商 |
3億5000万円 |
資本金 |
3000万円 |
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同社の主な顧客は、国、開発局、道庁や自治体などであり、公共事業投資額の増減が大きく売り上げに影響する。函館での業務が軌道にのった頃に公共投資は急速に減少し始めた。布村氏には「何か新しい事業を始めなければ」との思いが生まれた。
きっかけとなったのが、平成15年に函館エリアで採択された「都市エリア産学官連携促進事業」。北海道大学大学院水産科学研究院などの学術機関、北海道立工業技術センター(函館地域産業振興財団)との共同研究、新製品の開発、既存産業の活性化、新産業の創出などを目指す活動がスタート。その中のテーマの1つが、函館地域で特徴ある生物資源であるガゴメの研究である。
ノース技研は建設コンサルタントを主業とする会社。当然、水産に関する情報やノウハウはなかったが、新たな事業を模索するための勉強というスタンスで、情報発信グループに加わった。
情報発信は、まず情報収集から始まる。布村社長の下には多くの情報が集まってきた。情報を収集・整理して戦略を提案していく「コンサルタント」という同社の本業の力を発揮する機会がやってきた。
連携促進事業は6年間をもって終了、この間ガゴメの認知度は上がったが、メンバーには「まだまだ情報発信が足りない」との思いがあった。その思いを共有する企業が集まり、平成21年6月に「函館がごめ連合」が発足。6年間の事業成果のさらなる発展、企業主体の継続的広報活動とガゴメのブランド化を目指すことになった。
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▲函館がごめ ロゴマーク
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ガゴメのさらなるブランド化を目指す布村氏は「海藻活用研究会」に理事として参加、函館産の海藻の研究開発に尽力することとなった。
「海藻活用研究会」は函館地域の産官学が一体となり、コンブやワカメに代表される大型海藻の有効活用、産業化を目指して発足された。 北海道全域、特に函館地域の海藻資源を中心とした海藻資源が対象となり、がごめ昆布以外の海藻も対象となる。 海藻活用研究会に参加したことで「様々な課題が見えてきた」と布村氏は言う。
大学の研究結果を知った企業が商品化をしようにも、十分な量が取れないことにより断念せざるを得ない現状を見てしまったからだ。
そこで布村氏は、「北海道マリンイノベーション株式会社」を設立。 元々手掛けていた海藻分野をノース技研から切り離しノース技研の100%子会社として独立させた形だ。 それにより、大学の研究から産まれた有用な成果を研究で終わらせることなく、加工しやすい原料として世間に提供できる形にすることが出来るようになった。
北海道マリンイノベーション株式会社は「北大発のベンチャー企業」として認定され、海藻原料の安定供給など研究成果を世に広める橋渡し役となっている。
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連携促進事業から現在までの関わりから、海藻やがごめ昆布に魅了された布村氏。 中でも北海道大学と共に研究を行った「北大ガゴメ」に魅了されている。
「北大ガゴメ」は北海道大学と北海道マリンイノベーションが共同研究で特別栽培しているがごめ昆布のブランド名だ。 北海道マリンイノベーション株式会社では北大ガゴメを契約栽培している。
「北大ガゴメ」の特徴は、成長の早さととある栄養成分の含有量にある。 従来の養殖技術では成長するのに約18ヶ月かかっていたが、「北大ガゴメ」は約6ヶ月という早さで成長する。 成長が早いことで昆布以外での使用用途を広げることが可能となった。
「北大ガゴメ」にはF-フコイダンという栄養成分が豊富に含まれているのも特徴の一つだ。 保湿や免疫力の向上に効果があるとされている栄養成分で、 「北大ガゴメ」にはF-フコイダンが通常のがごめ昆布の2倍含まれている。 さらに、北海道機能性食品表示制度「ヘルシーDO」の認証を受けており、注目を浴びている昆布でもある。
2021年春には、この北大ガゴメの粉末を使用したサプリメント「ネバ勝ち!」が発売されることとなった。 「記憶力に不安を感じている高齢者からの反響が予想以上に多い」と布村氏は語る。
北大ガゴメは粉末・細切・粗挽と使用する用途によって使い分けることが可能となっているため、サプリメント以外にもレストランのメニューやパンなどの食品、石鹸や化粧品などの日用品にも使用され商品化している。 がごめ昆布の可能性は広がるばかりだ。
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▲北大ガゴメ
▲北大ガゴメ使用のサプリメント 「ネバ勝ち!」
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「良い研究結果はたくさんあるが、実際の商品化までには至っていないことが多い。そういうところの間に入って何かできないか」 「海藻の完全養殖の技術が確立できれば、届けたい人に供給ができるのではないか」 その思いで「北海道マリンイノベーション株式会社」を作り、がごめ昆布や海藻を広めることに尽力してきた布村氏。
海藻商品を世に出すことで、商品を通じて大学での研究成果を消費者へ伝えることができ、効果を実感してもらうことで海藻商品がさらに広がることとなる。 そしてその流れは原料を生産する浜の活性化に繋がる。 ノース技研、北海道マリンイノベーションによる、研究者と消費者の架け橋としての今後の活躍からは目が離せない。
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