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(株)菅製作所
「漁船」から「真空」へ
社長 菅 育正さん
←代表取締役社長
    菅 育正さん

 菅製作所は、菅 五郎が戦後に漁船エンジンの修理を手がけるために創業したのが始まり。だが、一時は栄えた漁船関連市場も北洋漁業の衰退や輸入の拡大により縮小に向かう。こうした状況に危機感を抱いた同社は業態転換を図り、幾つかの分野を模索した。まず目を向けたのは、漁業者向けの省力機械。実際にホタテの穴あけ機や昆布の裁断機などを開発したが、事業としてはあまり成功しなかったという。
一方で、当時、可能性を探っていたのが「真空技術」だ。当時菅製作所には真空に関する知識も技術もまったく無く、異業種交流会の中で真空について学ぶ勉強会を立ち上げ、北海道立工業技術センターなどから指導を受けながら新事業分野としての可能性を探った。「真空に関しては後発だった。」(菅育正社長)というが、勉強会によって事業化に目算の付いた同社は、平成4年(1992年)、工場の現在地への移転に伴い真空装置を組み立てる設備を導入。平成6年(1994年)に初めて販売に成功して以来、新事業として拡大を続け、今や「真空装置」の製造販売は、同社の売り上げの7割程度を占めるようになっているという。
「(株)菅製作所」の場所を地図で確認できます。
創立 1946年
代表者 代表取締役社長 菅 育正
住所 〒049-0101
北海道北斗市追分3丁目2-2
TEL 050-3734-0730
FAX 0138-49-8661
URL https://www.agus.co.jp
従業員 34名
年商 4億4880万円(2019年12月)
資本金 3,400万円


「(株)菅製作所」の会社外観
▲「(株)菅製作所」の本社外観
 
真空装置とは
真空装置とは、簡単に言うと仕切られた空間の中を真空にすることができる装置のことだ。真空になる「箱」の部分と真空を作り出すための設備との部分からなる。
実は、真空は様々な工業生産現場などで既に活用されている。真空状態が必要とされる技術のうちよく知られているのは、「真空成膜技術」。真空状態の中では金属も原子の状態で飛翔するため、これを何らかの物質に付着させることで均質な金属の薄い膜を成形することができるというわけだ。身近なものでは、スナック菓子の袋の裏の銀色の部分にこの技術が使われている。コンピューターの部品の生産などにもこの技術が利用されており、現代社会において真空装置は今や欠かせないものとなっている。
デスクトップ型ALD装置 SAL1000
▲デスクトップ型ALD装置 SAL1000
 
オーダーメイドからレディメイドへ
菅製作所が製作する真空装置の主な販売先は、大学や大手企業などの研究室だ。企業では普通、研究室の小規模な真空装置で実験を重ねてから生産ライン設備を導入する。同社が担っているのは生産ライン設備の製造ではなく、その前段階の研究用真空装置の製造販売だ。そしてそのほとんどは「こんな実験をしたいからこんな装置を作ってくれ」との要求がある。以前はフルオーダーメイドを主としていたが、現在は同社で規格化した装置をベースとし顧客要求を満足させるための機能を付加するレディメイドで対応している。「我々は大手企業がやらないニッチ分野であるレディメイド・オーダーメイドに特化している。」と菅育正社長。平成25年(2013年)には約40台もの真空装置を製造し、納品したという。
小型スパッタ装置 SSP1000キュービックスパッタ
▲小型スパッタ装置 SSP1000キュービックスパッタ
 
世界に広がるマーケット
菅社長は、今後の見通しについて「コンピューターの部品や液晶、プラズマディスプレイなど真空技術の成果品は現代生活の必需品になっている。さらに近い将来では太陽電池などエネルギー分野での成長も見込まれ、この市場の成長性は疑いの余地が無い。」と予測。今後の展開についても「真空分野でひとつでも尖った技術を提供していきたい。」と力を込める。
小さなマーケットは世界中にある。菅でなければできないという特徴を出して、日本に限らず海外にも進出したい(菅社長)。
菅製作所は、中小企業特有の小回りの良さと先端技術の開発力で世界を相手に渡り合おうとしている。
放電プラズマ焼結装置(SPS装置) SPS2000
▲放電プラズマ焼結装置(SPS装置) SPS2000